2026-10-09
モンドール病・腋窩索状症候群についてご説明します
豊胸術で腋の下を切開した後に現れる線状のしこり(モンドール病・腋窩索状症候群)について、原因や数週間〜数か月で和らぐ経過、温罨法・ストレッチなどの対処法を解説します。

腋の下の切開で豊胸術を受け
2〜4週間ほど経ったころ
腕を上に伸ばしたところ
腋の下から腕の内側にかけて
ギターの弦のようなものがピンと張って引っ張られ
驚かれた方がいらっしゃいます。
手術に問題があったのではないかと
ご心配になるかと思います。

結論から申し上げると、
多くの場合「モンドール病(Mondor Disease)」と呼ばれる症状で、
数週間から数か月のあいだに和らいでいきます。
この線はなぜ生じ、どのように和らぐのでしょうか?
今回は、腋の下の線の正体と
早く和らげるための方法を
まとめてご紹介します。
1. 腋の下にできた線の正体は何か?
皮膚のすぐ下を通る
細い静脈やリンパ管が
手術後の炎症によって硬くなり、
線状に触れるようになったものです [1][5]。
リンパ管は、体の体液を集めて運ぶ
細い管のことです。
普段はあまり目立たず、
腕を上げると線が浮き上がり、
線に沿って皮膚がくぼんだ溝のように引き寄せられます。
腋の下から肘の方向へ伸びることもあれば、
横胸に沿って下へ降りてくることもあります。
静脈が硬くなったものをモンドール病、
リンパ管が硬くなったものを腋窩索状症候群(AWS)
と分けて呼ぶこともあります。
見た目では区別が難しく、
経過や対処法も似ています [5]。
大切なのは、
皮膚の下の浅い層の問題であり、
インプラント自体の問題ではないという点です。
2. なぜ腋の下の切開後に多く見られるのでしょうか?
腋の下の切開は、
腋の下のしわ部分を小さく切開し、
皮膚の下に通路を作って、
胸までインプラントを挿入する方法です。
この通路が通る道筋には、
細い静脈やリンパ管が集まっているため、
損傷を受けやすいのです。
海外の論文では、モンドール病は
豊胸術後の約1%前後という
まれな症状として報告されています [2][3]。
ただし、これらの資料は大部分が
乳房下溝切開による手術から得られたものです。
米国の形成外科医1,067名を対象にした調査では、
主に腋の下の切開を用いると答えた人は
3.3%にとどまりました [4]。
海外でモンドール病がまれにしか報告されない背景には、
そもそも腋の下の切開による手術自体が少ないことも
影響していると、私個人は考えています。
一方、国内では
腋の下の切開による豊胸術が一般的で、
術後に腋の下の線を理由に来院される方も
少なくありません。
3. そのまま様子を見ていても良くなりますか?
はい、ほとんどの場合は自然に良くなります。
通常は4〜8週間、
長い場合は数か月かけて
線がやわらぎながら消えていきます [1][5]。
線が残っている間は、
腕を最後まで上げたときに引きつれたり、
だるさを感じたりすることがあります。
線が和らぐと、腕の動きも
手術前と同じように戻ってきます。
4. 早く和らげるにはどうすればよいですか?
まずは手術を担当した医師に診てもらってください。
診察で線の状態を確認したうえで、
以下の方法で回復をサポートします。
温める(温罨法)
線のある部分に
1日に数回、温めると
引きつれ感やだるさがやわらぎます [1]。
痛みが強い場合は、
医師が消炎鎮痛薬を処方することもあります。
軽いストレッチ
線を少しずつ伸ばしていくストレッチは、
引きつれや痛みを軽減し、
腕の動きをより早く取り戻すのに
役立ちます [5][6]。
海外のリハビリ理学療法士が紹介している動作のうち、
取り組みやすい4つをご紹介します [7][8]。
① 仰向けで腕を広げる
仰向けに寝て、両腕を横に広げ、
手のひらは上に向けます。
息を吐きながら肩の力を抜き、
慣れてきたら、腕を肩の高さまで
床に沿わせるようにゆっくり上げます。

② 横向きに寝て胸を開く
線のある側を上にして横向きに寝て、
その側の手を首の後ろに当てます。
膝をつけたまま、肘を後ろへゆっくり開き、
引っ張られる感覚があるところで息を吐きながら
数秒その姿勢を保ち、元に戻ります。

③ 横向きに寝て大きな円を描く
横向きに寝て脚を重ね、
上側の腕で床をなでるように
頭の上を通して背中の後ろまで大きな円を描きます。
向きごとに2〜3回ずつ行います。

④ 腕の神経を伸ばす
座った状態で、腕を横に肩の高さまで上げ、
手首を後ろに反らせてから戻す動作を
10回ほどゆっくり繰り返します。

いずれの動作も
「軽く引っ張られる程度」までにとどめ、
1日に何回かに分けて行ってください。
痛みがある場合は、動かす範囲を狭めてください。
ストレッチを続けていると、
「プツッ」と線がほぐれるような感覚が
あることがあります。
その後、引きつれ感が一気に軽くなることも多いです。
ただし、無理に断ち切ろうとして
強く引っ張ったり押したりしないでください [5][8]。
ストレッチを始める時期は、
手術部位の回復具合によって異なるため、
必ず担当医と相談して決めてください。
腋の下の切開による豊胸術後にできた線について、
次の2点だけ覚えておいてください。
1つ目は、皮膚の下の細い血管やリンパ管が
硬くなったものであり、
ほとんどの場合、数週間から数か月のあいだに和らぎます。
2つ目は、診察で確認したうえで
温めることと軽いストレッチを行えば、
より楽に過ごせるということです。
[手術前に確認しておきたいこと]
腋の下の切開後に腋の下の線が生じる可能性があると説明を受けたか
線に触れたときにすぐ相談できる連絡方法があるか
腕の運動やストレッチはいつから始めてよいか
腫れや熱感など、すぐに連絡すべき症状は何か
本記事は、正しい医療情報の提供を目的として、
韓国の医療法第56条を遵守して作成した記事です。
すべての施術や手術は、個人によって
大小さまざまな副作用が起こる可能性がありますので、
医療スタッフと十分に相談したうえで、慎重にご判断ください。
出典
Yamaguchi T. Mondor disease of the breast. Cleveland Clinic Journal of Medicine, 2022;89(7):371 — https://www.ccjm.org/content/89/7/371
Khan UD. Incidence of Mondor disease in breast augmentation: a retrospective study of 2052 breasts using inframammary incision. Plastic and Reconstructive Surgery, 2008. doi:10.1097/PRS.0b013e31817d6629
Gunnarsson GL. Mondor sykdom er ikke så sjelden som man skulle tro. Tidsskrift for Den norske legeforening, 2018 — https://tidsskriftet.no/2018/05/kommentar/mondor-sykdom-er-ikke-sa-sjelden-som-man-skulle-tro
Hidalgo DA, Sinno S. Current Trends and Controversies in Breast Augmentation. Plastic and Reconstructive Surgery, 2016;137(4) — https://www.drdavidhidalgo.com/wp-content/uploads/2020/09/34d9a108f03fbf3dd5084f9d248fa7a7.pdf
Koehler LA, Haddad TC, Hunter DW, Tuttle TM. Axillary web syndrome following breast cancer surgery: symptoms, complications, and management strategies. Breast Cancer: Targets and Therapy, 2019;11:13–19 — https://www.dovepress.com/axillary-web-syndrome-following-breast-cancer-surgery-symptoms-complic-peer-reviewed-fulltext-article-BCTT
Effectiveness of physical therapy in axillary web syndrome after breast cancer: a systematic review and meta-analysis. Supportive Care in Cancer, 2023;31(5):257. doi:10.1007/s00520-023-07666-x — https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37043039/
Yerbba – Breast Cancer (Dr. Jennifer Griggs). Axillary Web Syndrome: How to Manage and Treatment Options. YouTube, 2022-06-21 — https://youtu.be/yZekYNGMB3U
Cancer Rehab PT (Kelly Reid, PT). Getting Rid of Axillary Web Syndrome and Cording after Breast or Melanoma Cancer Surgery. YouTube — https://youtu.be/m14z2Xsilo8
よくある質問
腋の下に線ができたら、手術が失敗したのでしょうか?
多くの場合はモンドール病と呼ばれる症状で、インプラント自体の問題ではありません。皮膚の下の細い静脈やリンパ管が、手術後の炎症によって硬くなり、線状に触れるようになったものです。
腋の下の線は、どのくらいで和らぎますか?
通常は4〜8週間かけて線がやわらぎ、消えていきます。長い場合は数か月かかることもあります。線が残っている間は、腕を上げきったときに引きつれたりだるさを感じたりすることがあります。線が和らぐと、腕の動きも手術前と同じように戻ります。
腋の下の線を温めてもよいですか?
はい、線のある部分を1日に数回温めると、引きつれ感やだるさがやわらぐことがあります。ただし、まずは手術を担当した医師に診察を受け、線の状態を確認してから始めることをおすすめします。
ストレッチはいつから始めればよいですか?
手術部位の回復の度合いによって異なるため、担当医と相談して決めてください。軽いストレッチは、線を少しずつ伸ばして引きつれや痛みを軽くし、腕の動きを取り戻すのに役立ちます。「軽く引っ張られる程度」までにとどめ、1日に何回かに分けて行ってください。
モンドール病はよくある症状ですか?
海外の報告では、豊胸術後の約1%前後とまれな部類に入ります。ただし、これらの資料は主に乳房下溝切開の手術から得られたものです。国内では腋の下の切開による豊胸術が一般的なため、腋の下の線を理由に来院される方も少なくありません。
手術前に確認しておくべきことは何ですか?
手術前には、腋の下の切開後に線が生じる可能性について説明を受けたか、線に触れたときにすぐ連絡できる方法があるかを確認しておくとよいでしょう。腕の運動やストレッチをいつから始めてよいか、腫れや熱感など、すぐに連絡すべき症状は何かも、あらかじめ尋ねておきましょう。