2026-09-13
豊胸手術後に母乳からシリコンが出ることはあるのか ― 2017年の韓国内初報告事例の実態
2017年に韓国で初めて報告された、豊胸インプラント破損による母乳へのシリコン混出事例の実態を解説。正常な状態なら乳腺と隔離され授乳に影響はありませんが、自覚症状のない破損に備えた定期検診と切開部位の選択が重要です。
豊胸バッグ(インプラント)手術後に母乳からシリコンが検出された事例は、
韓国内では2017年1月に食品医薬品安全処(食薬処)が公式報告した1件があります。
インプラントが破損して漏れ出たシリコンジェルが乳腺を通って母乳に混ざり出たケースであり、
韓国内初の公式報告であると同時に、学術的にも報告がほとんどない極めて稀な事例です。
インプラントが完全な状態であれば、インプラントと乳腺組織が直接触れ合うことはないため、
母乳育児に影響を与えることはありません。
この事例について、私は2019年にハンギョレ新聞へコラムを寄稿しました。
当時書いた内容と、現在の状況について整理します。
2017年に何が起きたのか
2017年1月12日の食薬処の発表によると、
2016年に出産した母親が授乳中に粘性のある液体が混ざっていることを不審に思い、
ソウル市内の大学病院で診察を受けたところ、
MRIにてインプラントの破損と、シリコンが乳腺組織を通って漏出していることが確認されました。
韓国内で母乳育児中にシリコンが検出された副作用が公式に報告されたのは、この時が初めてです。
シリコンを摂取した子どもの健康には異常がなく、
母親はインプラント除去手術を受けました。
食薬処はこの報告を機に、2017年3月までに
韓国内で使用されている5社7種のインプラントの安全性を全面的に再評価すると明らかにしました。
当時の発表によると、直近4年間で報告された豊胸インプラントの副作用は約3,600件で、
そのうち破損が66%を占めていました。
なぜこのような事態は極めて稀なのか
インプラントは少なくとも乳腺組織の下に配置されます。
大胸筋下(デュアルプレーン法)に挿入する場合、筋肉が乳腺とインプラントの間に位置し、
筋膜下法で挿入した場合でも、インプラントは筋膜によって乳腺と隔離されます。
何よりも、挿入されたインプラントは被膜(カプセル)という体固有の組織によって区分・隔離されます。
インプラントのシリコンが母乳に混ざるには、インプラントの外皮が破損し、
さらにインプラントを包む被膜が損傷し、
漏れ出たシリコンが乳腺組織へと移行する経路が存在しなければなりません。
2019年のコラムでは、
「シリコンと乳房拡大手術の特性上、乳頭からシリコンが漏れ出ることは極めて困難であり、学術界に報告された例すらほとんどない」
と書きました。これは現在も同様です。
破損がなく正常な位置にインプラントがあれば、授乳に影響することはありません。
2019年に記載した内容で、今も有効な点
第5世代シリコンインプラント(いわゆるコヒーシブジェル)は、外膜が破損しても
内容物が流れ出ないよう凝集性を高めた製品です。
そのため、破損が生じても形状や感触が維持され、本人が気付かないケースが多くあります。
2017年の事例が示しているのは「シリコンが母乳に出る」ということではなく、
「破損は自覚症状がないまま進行することがあるため、定期検診で確認すべきである」という点です。
米国FDA(食品医薬品局)は、シリコンインプラントに対して手術後5〜6年目に最初の画像検査を行い、
その後は2〜3年ごとの確認を推奨しています。
インプラント手術も他の外科手術と同様、炎症、感染、被膜が厚くなるカプセル拘縮が発生する可能性があります。
これらは稀であり、事前に知識を持って準備すれば適切に管理できる問題です。
検証されていない施術や、無許可の物質を用いて手軽にバストアップができるといった
広告には十分な注意が必要です。
授乳の予定がある場合に確認すべきこと
切開部位:乳輪切開は乳腺組織を経由するため、乳腺や乳頭神経損傷のリスクについてカウンセリングで確認する必要があります。脇の下切開やアンダーバスト(乳房下溝)切開は乳腺組織を通りません。
挿入位置:デュアルプレーン法なのか筋膜下法なのか、乳腺とインプラントの間に何が存在するのかを把握しておく必要があります。
乳房インプラントは追跡管理対象の医療機器であるため、どの製品が誰に挿入されたかが記録されます。
手術から長期間が経過している場合は、妊娠・授乳の前に超音波検査で破損の有無を確認することをお勧めします。
<よくある質問>
Q. 豊胸インプラントが入っていると母乳育児はできませんか?
A. いいえ、可能です。インプラントは乳腺の下に挿入されるため、授乳には影響しません。ただし乳輪切開は乳腺や神経を通過するため、将来授乳のご予定がある場合はカウンセリング時に事前にお伝えください。
Q. 母乳にシリコンが混ざって出た場合、赤ちゃんに害はありますか?
A. 2017年の事例では、お子様の健康状態に異常はなかったと報告されています。ただし症例データが極めて限られているため、万が一異質な液体が混ざり出た場合は直ちに授乳を中止し、速やかに受診してください。
Q. インプラントが破損した場合、自分で分かりますか?
A. 最近のコヒーシブジェルは破損しても内容物が漏出しないため、形状や感触が維持されます。そのため自覚症状だけでの把握は難しいケースが多いです。超音波やMRI検査で確認を行います。
Q. この事例があるため手術は見送るべきでしょうか?
A. 韓国内での公式報告は1件のみであり、世界的に見ても極めて特異なケースです。手術を諦める理由ではなく、切開部位、挿入位置、術後の定期検診計画をしっかりと確認するための判断材料として捉えてください。